Masquerade 二章 正義

Masquerade 二章 正義

レーベル: HOBiGIRLS neige
CV: 河村眞人
企画・ディレクション: 黒抹茶
シナリオ: 高岡果輪
イラスト: 一野
2019年4月26日発売

公式サイト

 

会心の1枚でした。いや特典含めると4枚か。とにかくすごいもの聴いたなという感じ。初聴きの際はトラック5~5.5のあたりで萌え禿げてキャパオーバーとなり一旦停止、結局3日かけてようやく最後のBADアフターまで聴き終えたのでした。ぜえぜえ。息もたえだえだぜ。

しかしこんな…ッ、こんなクオリティの高さってある??? 河村さんのお声に真心こもりすぎじゃないですか。何か憑依してるんじゃないかってくらい魂のこめられた圧巻の演技。シナリオも騎士×姫君の正統派ロマンスで非の打ち所がないほどすばらしかったし。ここまで完成された作品ってなかなかないですね。ああまた傑作が更新されてもーた。

正統派ロマンスといっても予定調和の甘々一直線ではなく、血生臭い陰謀やらも絡み合って緊迫感があり非常に聴きごたえのあるストーリーでした。仮面舞踏会の夜に反乱勃発&公爵様殺害→追手から逃れ二人きりの逃避行へ、という流れは一章と共通。前巻はいきなり屋外で身を潜める場面から始まりましたが、今作は控えの間を脱出する瞬間がバッチリ描かれていましたね。あ~~ここだけで超絶かっこよい… 第一声が「姫様ッ!」な時点でもう惚れた…←

クロヴィスさんは公爵家の姫君(ヒロイン)に仕える8歳歳上の厳格な従者。“氷の騎士団長” と呼ばれているだけあってセリフは全体的に硬く畏まった表現や格式ばった言い回しが満載です。なのに不思議とくどさを感じないのは、台本がいいのはもちろんのこと、河村さんの「語り」の魅力が遺憾なく発揮されまくっていたおかげではないでしょーか。

張りのある毅然とした声。冷ややかな棘を含んだ声。嘆きと後悔に苛まれた悲痛な声。穏やかな幸せに満ちた優しい声。狂おしいほどの情熱に身を焦がす声。一言ごとの声の濃淡、緩急のつけ方が本当に豊かで深くて、ものすごいセリフ量にもかかわらず一瞬も聴き洩らせませんでした。この一作にいったいどれだけの数の感情が表現されていたか…。呼吸にすら確固たる意志が込められていて、見えないはずのト書きが目に浮かぶようです。って毎回同じこと言ってるけど新作ごとに感激がアップデートされるんだから仕方ないっ。

状況説明も心情描写も丁寧すぎるほど丁寧、しかも「これぞ!」というおいしいシーンが見事にぎゅっと凝縮された物語でぐいぐい引き込まれました。冷静沈着な騎士から打って変わって幼なじみのお兄さんの顔を見せるトラック3【安息】もそう。悪夢で錯乱するヒロインに “治療” を施し(オイシイ…)、悲しみに寄り添ってくれるのですが、終始恭しい口調を崩さず敬愛に満ちた態度で接するあたり本物の従者だなあ、姫様のことが心から大切なんだなあとしみじみ。お歌はわざと拙く歌っているのがかえって可愛さ百倍、頬がゆるみっぱなしでした。

一番の見どころはトラック5【真実】、最初の濡れ場に突入するまでの流れだと思います。あの気持ちの盛り上げ方、感情の持っていき方。仮面舞踏会7日前から当日までの行動や心境が一人称で語られた大ボリュームのカウントダウンSS(公式サイト参照)からすでにわりと切ない胸中がダダ漏れだった氷の騎士団長様。だからこそ結ばれるシーンはよかったねえぇ!とカタルシスにむせび泣きました。

逃避行中のある晩、ティリア王室に出仕している父と兄から秘密裏に受け取った書状で予想外の情勢を知らされ、公爵様殺しの犯人がレオではなかったと気づいて愕然とするクロヴィスさん。では真犯人は、いま自分たちを追ってきている者は誰なのか…。ここからラウルス王家との婚姻の裏にある陰謀、そして舞踏会の夜にクロヴィスさん自身がとった不可解な行動の真意が明かされていきます。これだけでも今まで隠されていた情報ばかりでドキドキなのに、語りが進むにつれ長年抑え込んでいた恋心がまるで鎧をひとつずつ解くように露わになっていくのです。シチュエーション的には滞在先の宿で会話しているだけの場面ですが、感情が激しく入れ替わるせいか怒涛の十数分間に感じました。なんなんだこの神展開は!?

クロヴィスさんの告白をかいつまんで説明すると、世襲ではなく叙勲によって地位を得た彼は、常に正しき聖騎士に徹して誇り高く完璧に振る舞いつづけなければ公爵家のナイトではいられません。だから少年の頃から本心を封印し忠実に務めを果たしてきたうえ、自分を初恋の人として慕ってくれたヒロインに対しても完璧な姫君であるよう厳しく諌めてきました。

その一方で、秘めた思いを断ち切れない彼は、舞踏会直前にある “備え” を整えてもいました。それはヒロインを攫って逃げるための準備であり、政略結婚の忌まわしい陰謀から彼女の命を救いたいという切実な願いと結びついた行動でもあったのですが、もしこの計画を決行したら主君を裏切る大罪を犯すことになる。正しき道を踏み外し穢れた騎士は、誇りある生はおろか姫君の側にいる資格すら失ってしまう。…そんな究極のジレンマでクロヴィスさんの内心は揺れに揺れていたのです。

そうして迎えた舞踏会当日、突如公爵邸に押し寄せてきた領民たちによる暴動。騎士団長として指揮を執る彼の眼前にあたかも神の啓示のように絶好の機会が訪れて……。ここ、「私が私であるために必要なものをすべて捨てようとも貴女をお守りしたかった」というセリフの重みがすごいです。ヒロイン一人を救うために騎士としての忠誠もそれまでの人生も文字どおりすべて捨てる覚悟でその行動をとったわけですから。

しかもその選択が思わぬ犠牲を生んでしまったと考えるとなんとも言えない苦さが残りますね…。。「何かを選ぶことは何かを捨てるということ」。一点の曇りもない綺麗な愛ではなく、血の上に成り立つ罪深い愛です。

裏切りの罪、さらには長年燻らせてきたレオへの激しい嫉妬心を告白し、自分は報われてはならないと涙を流すクロヴィスさん。この嘆きっぷりがまた迫真すぎるのですが、そんな彼に真の騎士であろうとなかろうとあなただけが私の騎士(=ひとりの男として愛してる)と真正面から伝えるヒロイン。これで最後の砦が崩れ、一気にぶわーっと苦悩から解放されるさまが本当に本当に見事でした。光が差し込んでたよ~~宗教画みたいだったよ~~(泣)

氷の仮面を取り去ったあとのクロヴィスさんはとびきり優しくかつ情熱的で、これでもかというほど姫様愛に満ちていました。トラック5からステラ特典のトラック5.5は絶対ひとつづきで聴くべきものだと思いますが(というか5.5もできることなら本編に収めてほしかったですね。いやそれを言うなら両エンドアフターもだけど ※無茶)、とにかくこの世の幸福ぜんぶ詰め合わせたみたいな最高のイチャイチャシーンでした、はい。

何がいいってセリフの端々に『生涯私には姫様お一人だけ』『身も心も魂も貴女のものです』という気持ちが溢れていたこと。まんまですが(笑)。クロヴィスさんの言う “貴女だけ” はガチの奉仕愛だからよけい刺さるんですよねぇ…。しかも初めてのヒロインに対し優しさといたわりをもって丁寧に愛撫して、キスもめちゃめちゃ多くて、あ~~ずるい。最高の流れで濡れ場に突入したうえここまで甘優しくリードして可愛がるなんてずるいよぉ。軛から解かれ、生まれて初めて心のままに大好きな女性を抱ける喜びに恍惚としているのが伝わってきます。

具体的な描写としては、舐めながらベルトをしゅっしゅっと外すところが妙にえろいよなと思いました。興奮が極まってる感。あと挿入前にあの、こすりつけるのもよきですね。まる。それと河村さんのお声がますます色っぽさを増していて「姫様、もっとお口を開けて」とか「姫様、いい?」とかちょっとした一言すら破壊力ありすぎて空恐ろしかったです。さらに神がかった美声リップ音吐息に加え最近ごくっと唾飲む音まで入れてくるじゃないですか、あれが本当に生々しくて動揺しますどうしましょう。。

フェードアウトした直後の場面から始まるトラック5.5【本懐】(ステラ特典)。一度果てても熱が収まらず情熱的にヒロインを貪る様子がも~~たまらんですが、尺28分のうち行為そのものはバックで愛し合うこの1回だけ。その後は抱き合って、時々体勢を変えつつ最後までずっと繋がった状態のまま会話を繰り広げます。穏やかにほほえみ、キスを交わし、たがいの温もりを感じながら眠りにつくまでゆっくりゆるゆると…。珍しい構成だなと思いましたが、あああ、この多幸感やばいですね。幼少期の面はゆい思い出や成長後の複雑な心情、後悔や決意など静かに語る声が心地よいったらなかったです。お歌のアンコールもウフフフフ^^

SEについて触れますと、水音・衣擦れ・ベッドの軋む音など聞こえるか聞こえないかくらいの音量で声を邪魔せずタイミングもぴったりだったのが個人的には嬉しかったです。日常場面のSEも違和感まったくなかったし、ホビガさんこんなに音響よいとは。以前某作品でびっくりしたことがあったんですけども(笑)

 

 

無事思いを遂げてめでたしめでたし、とはならないのがこのシリーズ。その後届いた複数の密書により二人は国内外の切迫した情勢を知らされます。陰謀を企てたティリア王室に、今彼らを追って来ている対立勢力。さらには第三勢力としてティリアを介さず直接ヒロインを迎え入れることを提案してきた敵国ラウルス。いずれも姫君を政治の道具として利用しようとしている事実に変わりはなく、一歩間違えれば死という危機的状況です。

クロヴィスさんは祖国を捨てラウルスに向かうようヒロインを諭します。悪い選択肢しかないならせめて少しでもマシな方をということでしょう。当然ヒロインはその進言を拒みかけますが、

罪を犯して穢れた私とは違い、貴女は尊き血を持つ本物の姫君です。家も名も過去も、何もかもを捨てて市井に下り、一生日の当たらぬ場所で逃げ隠れするような生き方をさせずにすむ道があるのなら、私は…!

と彼。ヒロインへの愛が揺らぐことは決してない、けれど騎士として主の幸せを願う気持ちにも偽りはないという必死の訴えです。今にも追手が迫り、運命が決まらんとするこの瞬間さあヒロインはどうするか…!というところでエンド分岐。

ひとつは提案どおりラウルスに嫁ぐ道。もうひとつはティリアにもラウルスにも背を向け、愛する人と共に生きる道。上に引用したクロヴィスさんの苦渋の発言もヒロインが抱えているものの重さもひじょ~によくわかるんですけど、やはりここはどうしても二人で生きる道を選んでほしいなと思ってしまいますね。結ばれた場面があまりにも幸せそうだっただけに。

実際、ハッピーエンドは内容的にも至高のハッピーエンドでした。客観的には騎士と姫であることを捨てる選択なわけですが、これぞまさに騎士道物語であり極上のロマンスであり最高の終着点ではないですか。姫様を先に逃がし単騎で敵陣に突っ込んでいく姿は鳥肌立つほどかっこよかったし、それから数ヶ月後か数年後か、長い時を経てようやくすべてにけりを付けて姫様の元に帰ってくる場面はもう、もうううぅ…(号泣)。。涙なしにはって表現は安っぽいので多用したくないんですけど本当に泣いてしまいますこれは。それもこれも河村さんのお声が静謐で優しすぎるからいけないんだ。ここは天国か。たしかに天国ですわ。

最後の場面、室内を見回して「小さいながらも温かないい家」だと微笑むところがすごくいいなと思いました。ヒロインはクロヴィスさんが必ず生きていると信じて、いつ彼が帰って来てもいいよう隠れ家をきれいに整えておいたんだろうな、慣れない家事をこなしながら一人でずっと待ち続けていたんだろうな~なんて勝手に妄想が膨らみます。いやほんとこのエンドはいろいろ妄想が止まらんですね…長い不在のあいだも帰還後の生活も…。尺は短いながらも不思議と短く感じない、今後も記憶に残りそうな濃いラストシーンでした。

 

続きはホビガ特典のハッピーエンドアフター【陽光の誓い】。遠い異国の村で名もなき夫婦となった二人を描いたこの後日談も必聴です。

手に職を持ち、慎ましい村の生活にもすっかり馴染んだ様子のクロヴィスさん。ある日のお仕事帰りに新妻と一緒に森の中へピクニックにやって来て、明るい光の差し込む二人きりの空間で来し方行く末を静かに語らいます。そのうちいつもより開放的な気分になり、ちょっぴり羽目を外して大胆に…。このイチャイチャがまたとても素朴で可愛らしくて、しかも絶妙にいやらしい。クロヴィスさんの姫様愛は健在ですが以前よりいっそう大切な宝物を慈しんでいるような雰囲気です。

河村さんの色っぽすぎるボイスが随所に炸裂してますが、中でも「こんないやらしいこと絶対にできなかったのに」のあたりがめちゃくちゃときめきました。姫様のとある行為に「背徳的すぎて気が狂いそうです…」と興奮したり、途中で「それはしてはなりませんよ?」と優しくストップかけるのもよかったなぁ。つくづく紳士。後ろからされるのとお馬さんごっことどちらがいい?と尋ねる箇所はお馬さんごっこお願いしたらどうなっちゃうのか大変気になりました(笑)

あと脚を初めて直接見せるのはものすごく勇気が要っただろうなと思ったり。平和な日常の幸せを噛みしめながらもつい弱音を吐いてしまうクロヴィスさんの姿が痛ましくもありました。己を責める声、罪の意識、二度と剣を持てなくなってしまった苦い悲しみ。誇りあるナイトの位を自ら捨てると同時に闘う能力までも失ってしまったのは相当堪えたことでしょう。

でもだからこそ、痛みごと抱えて生きようという決意の言葉が非常に説得力をもって響きました。この二人なら生涯支え合い仲睦まじく生きていけるに違いない… 伴侶って単語がこんなにしっくりくるカプおらんぞ~~~!!!

 

 

…さて。マイレディエンドの感慨に浸って感想終わらせたいところですが、このシリーズのキーワードのひとつ『光が強くなればなるほど影もまた濃くなる』に従ってBADのマジェスティエンドにも触れなければですね。。こちらは光り輝くハピエンとは正反対の穢れた愛欲にずぶずぶ溺れる闇ルート。えらいこっちゃ。

トラック6までの展開を考えるとヒロインがなぜ女王化の決断をしたのか腑に落ちない気もしますが、公爵家の生き残りとしての責務と個の幸せを天秤にかけた結果、泣く泣く前者を選択したのでしょうか。あるいは自分が生まれ変わりだと囁かれている “血まみれ王妃” の伝説がふと頭に浮かんだのか…。

敵国ラウルスに嫁いで祖国ティリアへの復讐を目指すヒロインと、絶対の忠誠を誓う騎士クロヴィスさん。しかしその内実は高邁な理想を捨て欲にまみれた者どうし。夜ごと王太子の目を盗んでの不倫関係です。ハピエン方面といろいろ対になった内容で、帯のセリフもまったく違う意味に響きます。まあ、「そんなに泣かなくとも大丈夫です。クロヴィスがすぐにきれいにしてあげますからね」のあたりはかなり好きですけど!(コラ)

そしてアニメイト特典のバッドエンドアフター【陰翳の騎士】。本編の分岐点では自ら女王になる野望を掲げたヒロインですが、特典ではむしろクロヴィスさんのほうが主導権を握って女王擁立のため暗躍している印象でした。仄暗い、というかもはやどす黒い。

W貞操帯にはびっくりですが、一章と同じくこの世界観ならではの特殊プレイを存分にぶっこんでるな~って感じの濡れ場でしたねえぇ。暗くねっとりした囁きは人が変わってしまったようで、本当にクロヴィスさん?と驚くほど。昔以上にヒロインを畏縮させつつ、支配と狂信が一体化したような淫らで倒錯した愛を注ぎます。終盤のわなないた声もすごい…。ただ、どんなに歪みまくっても『私には貴女だけ』『騎士としてすべてを捧げます』の姿勢は不変なのが実は嬉しかったです。

最中「どうせ私たちは骨の髄まで穢れているのですから」というセリフがありましたが、クロヴィスさんの行為はなんだかわざと自分たちを穢しているように見えました。肉体だけでなく魂までも…。

本編トラック5で素顔で愛し合う喜びを知ってしまった以上、“ラウルス王妃とその従者” という新たな仮面を被って演じきるのは到底不可能。でも綺麗な愛などもはや手に入らないから、堕ちるならとことん堕ちてしまえとばかりにあえて最も穢れたかたちで交わろうとしている。自らを罰し、痛めつけ、いっそ狂い果ててしまいたがっている―― そんなふうに思えてならない特典でした。

 

 

最後に二章まで聴いて気になったことをつらつらと。

  • クロヴィスさんの報告によれば舞踏会の夜、領民が城内へ侵入したのは8時30分。一章のレオの証言(8時10分)と20分も差が。公爵様殺害時に犯人の手で控えの間の時計の針が止められたということ?
  • 一章のカウントダウンSSでレオはノエル様に与えられた「流感の予防薬」を服用していないことが判明(貧しい人たちに横流しにしていたから)。一方クロヴィスさんはしっかり念入りに飲まされていましたが、本編では特に薬の影響がうかがえる描写はなかったような…。というか今のところ話題にすら上っていませんね。
  • 血まみれ王妃の血は個人的にはヒロインよりもノエル様のほうが引き継いでいるんじゃないかという気がします。やばい匂いは彼の方がプンプンですよね。身体が弱くて長く生きられそうにないって設定は近親婚を繰り返してきた家系から来るもの??

 

とりとめなくてすみません^^;

「誰が?」という犯人当ての推理劇ではないので「どうして?」を楽しんでほしい、と高岡さんはおっしゃってました。動機…全然見当つかないな。三章をひたすら楽しみに待とう。。

そういえば例のオリジナルソング、一章と二章で歌詞が違いましたね。共通で出てくるキーワードは『白い花』。なんとなくですが、一章はキラキラ崇高で手の届かないイメージ、二章はもっと柔らかで優しさあふれるイメージの歌詞でした。各キャラから見たヒロイン像なのかも。